「MQAが快進撃している」

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「MQAが快進撃している」

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「MQAが快進撃している」
麻倉怜士先生、AV評論家


MQAは「10マイクロ/秒」という人間が判別、知覚する音進行時間の細かさを、そのままシステムの時間軸解像度として実現した、初のデジタル音声フォーマットだ。その結果、音楽の生々しさ、生命力が横溢する音を得た。臨場感と輝かしい質感再現力も感動的だ。
 
 MQAはまずはダウンロードシーンでの超高音質デジタル音声ファイルとしてデビューした。すでにe-onkyo musicを初めとする世界のハイレゾ・ダウンロードサイトでは、数え切れないほどの多くのMQA作品が、販売されている。MQA世界の拡がりに呼応し、MQA対応のデジタルオーディオプレーヤーやDAC搭載アンプなどは現在、世界で100種類以上に達した。

 これを第1章とすると第2章はCDをMQA化したその名もMQA-CD。2018年に日本のレコード・レーベルUNAMASと録音機材を取り扱う独RMEの代理店であるシンタックスジャパンがCDに折りたたんだMQA信号を収載した「MQA-CD」を開発。パッケージメディアとしてのMQAの可能性は日本人の発想になるものだ。CDの最終形「ハイレゾCD」としてユニバーサル・ミュージックが熱心に取り組んでいる。過去のカタログ作だけでなく、新譜も続々MQA-CDとしてリリースされている。

 MQA-CDは、MQAデコーダーを通して聴くことで本来の高音質で再生されるがが、驚くべきは通常のCDプレーヤーで聴いても高音質化が図られていることだ。これは2年前の放送機器展InterBEEで実際に試聴してわかったこと。通常のCDプレーヤーで再生しても、音がかなり違った。ふくよかでしなやかになり、音の表面がきれいになった。この時使ったCDプレーヤーは3万円程度のエントリーモデル。そんなものでも音は格段に違ったのである。プレーヤーの性能に左右されない高音質再現が証明された。

 そしていま、本命のMQAストリーミングが立ち上がりを見せている。元々MQAは、ストリーミングでの配信を前提に考えられたフォーマットだ。MQAの考案者であるBob Stuart(ボブ・スチュアート)氏は、英国の名門オーディオブランド、メリディアン・オーディオの創設者。ハイエンドオーディオを生み出す一方、デジタルテクノロジーへの知見も深く、デジタル圧縮技術にも強い。ハイエンドオーディオテクノロジーの元祖とも言える人物だ。

 そのStuart氏は約7年前にMQAを「音が良く、かつ便利なオーディオファイル」として開発した。Stuart氏はこう言った。「最も音が良いのは、オープンリールのアナログテープですが、使いにくい。カセットテープの音はそこそこだけれど、使いやすい。現代ではストリーミングはたいへん便利ですが、音が悪い。つまり音楽を聴く音質と利便性は常に反比例してきたのです。利便性の高いものは音が悪いという課題を解消し、音が良く、同時に便利を実現したのがMQAなのです」。

 その意味では、まさにストリーミングに使うのが、もっとも開発意図に沿った活用方法といえよう。「ストリーミングにこそMQA」という今後のトレンドを先駆けした世界初の映像+MQA生配信実験が10月6日、東京・富ヶ谷のハクジュホールで開かれた。
コロナ禍の影響でコンサートのネット配信が激増しているが、問題は音質。圧縮音声なので、コンサートでの生の音のヴィヴットさや、空気感は伝わらず、リアルな臨場感にはほど遠い。でも高音質でライブを聴きたいとの思いは強い。では、ネット配信でどれほどの高音質が実現できるか。本実験を主宰したWOWOW技術局の入交英雄氏によると「MQAはハイレゾの高音質でありながら、折りたたみ技術によって、CD程度のレートに縮小するできることが今回、採用した理由です」。

 少し説明すると、今まで音質が良いものはサイズが大きい、重たい---というのが常識だったが、MQAは、音質をまったく変えずに軽量化を実現した初めてのデジタル・フォーマットだ。それが「オーディオ折り紙」だ。折りたたむとCDほどの小さな容量まで縮小され、MQAファイルではCD並の音で、MQA-CDでは通常のCDプレーヤーで音楽を聴くことが可能になる(実は前述のように通常CDより高音質)。さらにMQAデコーダーを通すと折り紙が広がり、元のハイレゾ帯域で再生できる。この折り紙技術は特に、帯域が限られるインターネットのOTT伝送ではおおいに威力を発揮するはずだ。
 
 そのことが見事に実証されたのが、ハクジュホールのMQA伝送実験であった。演奏は世界的にも著名で、現在はニューヨーク在住のマリンバ奏者の名倉誠人氏。そのソロ演奏を合計14本のサラウンドマイクにて、196kHz/24bitのリニアPCMに収録。これをヘッドホンで立体的な音響が聴ける「HPL」(HeadPhone Listening)にエンコードし、次ぎに2チャンネルにダウンミックス、MQA形式にエンコードする。最終的にMPEG-4 ALS形式(ALSはAudio Lossless Codingの略)に変換し、映像とともに視聴者に届けられた。ネット経由でこのファイルを受け取った視聴者は、パソコンにて無料アプリ、VLCメディアプレーヤーで映像を再生、音声はパソコンのUSB端子から、MQA対応DACとつなぎ、アナログ音声を得る---という経路で、名倉氏の演奏が届けられた。

 舞台で実験の総括を行った私のコメントを再録しよう。「ホールでの生演奏とホワイエでのMQAサウンドはかなり近いなと感じました。MQAの何が凄いかというと、時間軸解像度を高める処理をしているので、音の飛び方、空気感がとても生々しい。このような体験はMQAだからこそ可能になったもの。昔からすると夢物語のようで、生演奏を生々しくリアルタイムで聴けたら……というドリームがカムトゥルーしたなと感じました」。

 今後もMQAのアクティヴィティから目を離せない。

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